検証メモ

ゲームや関連領域の関する気になった点を検証していきます。

「アイカツ!のり弁」と「のり弁当」は何が違うのか、検証してみた。

 7/17(木)、たまたま夕方にテレビ東京にチャンネルを合わせていたところ、アイカツ!の劇中で登場したのり弁を再現した「アイカツ!のり弁」がほっともっとで発売されるというCMが流れていた。

http://www.hottomotto.com/aikatsu/

 ほっともっとと言えば、容器の全体に白飯が盛られのりが重なり、そしての上に白身魚のフライとちくわの天ぷらが男らしくのっかっている「のり弁当」が思い浮かぶ。しかし、「のり弁当」は320円、平日昼であれば270円で食べられる。一方、今回の「アイカツ!のり弁」は500円である。この230円の差はどこにあるのか。実際に2つを食べ比べることで検証してみた。

 なお先に断りを入れておくが、筆者はアイカツについての知識は浅い。きちんと見たのは無料配信されていた1話~8話だけであり、「主人公の実家が弁当屋であり、主人公が凱旋帰郷した際についてきた友人がそこでのり弁を食べていた」くらいの知識しなかい。ゆえに、本稿での劇中設定に関する記述については温かく見守っていただき、誤りがあれば断罪ではなくご指摘をいただけると幸いである。だが逆に言えば、作品についての前提知識がない分、純粋に「のり弁当」と「アイカツ!のり弁」の中身について比較ができるとも言え、むしろ調査者として適しているとも考えている。

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図1 劇中に登場したのり弁のイメージ

0)調査概要

  • ほっともっとにて「アイカツ!のり弁」「のり弁当」の両者を購入し実食
  • 検証日は2014年7月18日(金)、つまりアイカツ!のり弁提供開始日の翌日
  • 製造・購入店は横浜市のほっともっと店舗(そのため、本文中のメニューページのリンクも神奈川県の店舗用のものである)

 

1)公表値による比較

アイカツ!のり弁(ライス普通盛)

 http://www.hottomotto.com/menu_list/view/14/344

熱量626Kcal,蛋白質22.9g,脂質21.5g,炭水化物84.9g

食塩相当量2.3g,カリウム449mg,リン258mg

 ○のり弁当(ライス普通盛)

 http://www.hottomotto.com/menu_list/view/14/41

熱量695Kcal,蛋白質15.1g,脂質16.9g,炭水化物119.6g

食塩相当量3.5g,カリウム319mg,リン164mg

 熱量は「のり弁当」の方が高いが、蛋白質・脂質は「アイカツ!のり弁」の方が多い。そして炭水化物は「のり弁当」が多い。これを見るに「のり弁当」はまさに白身魚のフライとちくわの天ぷらでのり付白飯をかっ喰らうもの!という位置づけが見えてくる。

 

2)容器による比較

 ホームページ上の画像及びデータより、おおまかなイメージはついた。そこで、実際に両者を買ってきて比較することにした。なお購入時においては、『娘に頼まれてアイカツ!の弁当を買いに来たが、自分の弁当の値段より倍近く高くてびっくり』という設定を心の中で呟いていたことを付記しておく。

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図2 購入した「アイカツ!のり弁」(左)と「のり弁当」(右)

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図3 アイカツ!のり弁」(左)と「のり弁当」(右)の大きさ比較

 

 まずは弁当の容器。「アイカツ!のり弁」は約16cm×22.5cm(図3:左)、「のり弁当」(図3:右)は約19cm×13cm。単純に掛け算して面積を求めると、360cm^2と247cm^2であり、数字上は「アイカツ!のり弁」の方が5割ほど多く見える。実際に(水を入れて)容積を測ったところ、「アイカツ!のり弁」は約840mlに対し「のり弁当」が約560mlと、やはり「アイカツ!のり弁」が5割大きかった。

 しかし、あの「のり弁当」の見た感じからするボリュームの大きさはどこからきているのだろうか。横から見ると容器自体の深さは同じ(ともに約3cm)であるが、「のり弁当」の蓋は厚さがあり、容器(皿)の上におかずを盛り付ける余地がある。つまり、弁当の皿から意図的にあふれさせることで、ボリューム感を演出しているのである。

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図4 アイカツ!のり弁」(左)と「のり弁当」(右)を横から見たところ(左は包装紙を背景にしちゃったのでちょっと見にくくなっちゃったのだけど)

3)具材の比較

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図5 「アイカツ!のり弁」の重量(容器6g含む)

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図6 「のり弁当」の重量(容器6g含む)

 

 実際に重量を計測したところ、「アイカツ!のり弁」は380gに対し、「のり弁当」は403gであった。なお、「のり弁当」については付属のソースの重量は除く(だってソース使わない派なんだもん)、また「アイカツ!のり弁」については、のりの上にめんたいマヨソースでデコレートすることで完成するのだが、全部使うことができなかったので、5g程ロストしてしまっている。ともあれ、「アイカツ!のり弁」は「のり弁当」より重量比5%程ほど少ないと言えよう。

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図7 のりの上にめんたいマヨソースで音符が描けるアイカツ!音符シート(左)と実際にシートを用いて描いた音符。きれいに描くのは結構難しいので、これから食べる諸賢には是非特訓していただきたい。

 

3-1)おかず

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図8 アイカツ!のり弁」のおかず

 「アイカツ!のり弁」のおかずは、鶏唐揚げ、たこさんウィンナー(鶏・豚)、しゅうまい(豚)、ポテトサラダ、玉子焼き、スパゲッティ、沢庵(赤)、トマトケチャップである。バラエティに富んだ子どもが好きそうなおかずが並んでいる。いや、沢庵がそうかどうかは審議すべきだが。重さは140g。

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図9 「のり弁当」のおかず

「のり弁当」のおかずは、白身魚(ホキ)のフライ、ちくわの天ぷら、きんぴら、沢庵である。重さは127g。

 こうしてみると、両者のおかずの共通点は沢庵しかない。いや、正確には沢庵も色が違う。

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図10 「アイカツ!のり弁」の沢庵(左)と「のり弁当」の沢庵(右)

 

3-2)白飯・のり部

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図11 アイカツ!のり弁」(左)と「のり弁当」(右)。店から持ち帰る時間経過のため、のりが白飯からの蒸気でしわしわになってしまって申し訳ない。

 白飯は両者ともほっともっと拘りの金芽ごはん。両者の違いはその量である。「アイカツ!のり弁」は 236gに対し、「のり弁当」は276g。40gも多い。具材に占めるのり飯の割合(質量比)も、アイカツ!のり弁」は63%に対して「のり弁当」は68%である。

 またその配置を見ても、アイカツ!のり弁」において白米・のり部は弁当の一部であるのに対し、「のり弁当」はまさにこの弁当のメインであり「さあ、のり飯を喰らえ」という声が聞こえてきそうである。

 なお両者とも、のりの下には おかか昆布が引かれている。「アイカツ!のり弁」にも。やはりこれもこだわりなのか。

 

4)実食検証

 見た目や重量の検証が終わった所で、両者を交互に食べることによる実食検証に移る。白飯・のり部は両者同じではあるのが、できるだけ「のり弁当」のおかずは「のり弁当」の飯で、「アイカツ!のり弁」のおかずは「アイカツ!のり弁」の飯で食べることを心掛けた。

 まずは「のり弁当」から。カリっとした衣の白身魚フライを噛みしめ、のり飯をかっこむ。次にちくわの天ぷらを食べ、またのり飯をかっこむ。揚げ物で続いた口をきんぴらや沢庵でさっぱりとさせてから、またのり飯をかっこむ。のり飯の上におかずがあるという配置のせいもあり、おかず→のり飯→おかず→のり飯のローテーション。おかずはのり飯のために存在しているといっても過言ではない。フライから染み出る油ですら、のり飯の味にアクセントをつけるものとして存在している。王道。

 一方、「アイカツ!のり弁」。こちらはいろんなおかずがあり、またのり飯部とおかず部が左右に分かれているため、からあげ→玉子焼き→のり飯→ソーセージ→しゅうまい→のり飯、といったように、必ずしもおかずの後にのり飯が来るとは限らない。やはりこの弁当における のり飯の役割は、「のり弁当」に比べては重くはないことが実食でも実感できた。

 「アイカツ!のり弁」の、のりの上に音符型に描いためんたいマヨソースだが、これはのり飯部の中央にあることに意味があり、「はじめはのり飯で」「中盤過ぎたらめんたいマヨソースで味の変化を」という配慮とも取れる。音符型にしてある(しかも食事者が自ら)がゆえ、食事開始いきなりにその形を崩すことは躊躇されるので「最初からめんたいマヨソース味のご飯」にできないというのもミソである。(これは、劇中ののり弁からして、そのような意図があるのではないか)

 めんたいマヨソースの味については子供向けというところもあって辛く(からく)ない。というかマヨネーズ味の方が強い。ポテトサラダもマヨネーズ味が強いので、食事中盤以降にポテトサラダ→のり飯withめんたいマヨソースと食べると口の中がマヨネーズで支配されてしまい結構辛い(つらい)ので、食べる際には注意していただきたい。

 

5)劇中弁当との比較、ほっともっとの他の弁当との比較

 本稿は「アイカツ!のり弁」と「のり弁当」の比較が趣旨だが、ここで劇中の のり弁の再現度についても考察してみる。

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図12 劇中の「なんでも弁当」の のり弁(右)と「アイカツ!のり弁」(左)

 劇中で登場したのり弁画像と比較すると、花型にしたニンジン、しゅうまいのグリーンピースがない。また、しば漬けは赤い沢庵になっている。トマトケチャップはプチトマトの代わりだろうか。

 一方、鶏唐揚げ、たこさんウィンナー(鶏・豚)、しゅうまい(豚)、ポテトサラダ、玉子焼き、スパゲッティ、沢庵(赤)、トマトケチャップはほっともっとの他の弁当は他の弁当でも使用されている具材である。(スパゲッティはスパサラだろうか)

 他の弁当を見る限り、ほっともっとのレギュレーションとして野菜が提供できないわけではなさそうなので、純粋に「ほっともっとの他の弁当で提供している具材を使って再現している」ということだろうか。他の弁当にはない星柄かまぼこがトッピングされた「アイカツ!スターライトカレー」「アイカツ!応援弁当」は店舗によっては提供していないそうなので、流通や店舗オペレーションの都合なのかもしれない。

 といっても、包装にキャラのイラストが描かれた めんたいマヨソースはこの弁当のためだけにある。また、ウインナーはたこさんにしている(他の子供向け商品「ドラえもんランチ」「ドラミちゃんランチ」でもウインナーはたこさん型でない)ので、できる範囲での対応はされているようである。

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図13 劇中では緑色の仕切りカップのところ、「アイカツ!のり弁」ではレタス柄のバラン

 

6)価格について

 「アイカツ!のり弁」は「のり弁当」と比べ180円、平日昼ならば230円高い。具材の数が違う、レギュラーオペレーションではないという所から価格差が出るのは当たり前である。しかし、5)で見たように、他の弁当で使用している具材を用いることでコストの低廉化に苦心しているはずである。

 そこで、包装紙に目を移そう。包装紙にはバンダイのロゴがあり、バンダイのアンケートページへの誘導もある。

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図14 「アイカツ!のり弁」包装紙。サンライズ承認済マークもある。この紙に経済価値がある。

 また、本件のプレスリリースを見ると、

製造・販売元:株式会社プレナス 発売元・企画:株式会社バンダイ

「ほっともっと」アイカツ!キャンペーンのお知らせ((株)プレナス ニュースリリース

http://www.plenus.co.jp/new/index.php?action=pdf&id=658

と書かれている。

 めんたいマヨソースを描くために使用したアイカツ!音符シートにも主人公の絵が描かれている。画像は無いが、めんたいマヨソースの包装袋にも主人公のイラストが描かれていたと記憶している。

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図15 アイカツ!音符シート(再掲)。これを使えばお子様の日頃の食事も楽しく……と言いたいところだが、「シートは使い捨ての製品です。繰り返し使用しないでください」という注意書きがある。残念。

 もちろん、これも忘れてはいけない。アイカツ!なんでも弁当にはオリジナルアイカツ!カードが付いてくる。しかも5種の中から好きなものを1枚選べる!

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図16 オリジナルアイカツ!カード(ピンクアルプスプリム)。友人の娘(小2)に進呈予定。

 

 そう。つまり、この弁当はバンダイの商品なのである!

 

7)まとめ

 「のり弁当」は、のり飯とおかずの配分、配置、おかずのチョイス、そして容器の形状からして、まさに のり飯を一気に食し堪能するための弁当である。

 それに対し「アイカツ!のり弁」は、「のり弁当」と比較して焦点はのり飯以外の部分にもあたっている。劇中の弁当からして、のり弁という弁当の王道は示しつつも、のりの上に音符型に描いたソースとさまざまなおかずが食べ始めと途中で味を変えることができるという点含めて、弁当全体を楽しんでほしいという気持ちが伝わってくる。

 一方、「アイカツ!のり弁」に使用されている具材に目を配ると、ほっともっとの既存の弁当の具材を組み合わせることで、コストを抑えつつも劇中に登場したのり弁を現実世界に召喚しようと心を砕いた一品と言えよう。購入者自身がめんたいマヨソースを のりに描くことができるという点も、弁当にインプットをさせることで劇中世界への没入を高めるギミックとして秀逸である。よくあるコラボメニューと比べて、主人公の母親が弁当屋を営んでいて、そこで提供されている弁当を作り食べられるという点も劇中なりきりポイントが高い。アイカツ!世界を体験するアイテムとして、ファンならば一度食してみるのもありではないだろうか。

 なお、アイカツ!に興味がなく、おかずがレギュラーとは異なる「のり弁」を食べたいという理由で選択するには割高な商品である。

 

 

 

 あと、「アイカツ!のり弁」と「のり弁当」を一人で同時に食すのは、ただでさえ物量が二人前になる上、量が多くて食べるのに時間がかかっている状態で、フライと天ぷらと唐揚げと揚げ物が続くところに、ポテトサラダのマヨとのり飯の上にのせたマヨソースが連携して口の中に油っぽさを増幅させてくるので、食い合わせが悪い。

やめろ、マネするな!

 

<補足>

小学生の娘を持つ友人に聞いたところ、「メインターゲットたるJS(女子小学生)にはごはんの量が多すぎるのではないかと推測された」という意見を頂いた。しかし、小盛り設定がないどころか大盛り設定は可能というところが、アイカツ!のターゲットの広さがうかがえる。

 

<おまけ>

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 食べた後の「アイカツ!のり弁」の容器。横にご飯を配置できる容器って気が利いてるなあと思いながら向きを変えたら

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 普通の弁当の容器じゃん!

(7/22現在のほっともっとのメニューではアイカツコラボメニュー以外では使用されていないが)

 見た目のこういう工夫って大事だね。